第20章 剥がれ落ちた花びらが舞う
「しかも血ぃ出てるし。
なんでだよ」
「別に、何も無いよ?
ただぶつけただけー」
「ぶつけてそんな風に
切れるわけねーだろ」
頬を隠していた右手を
無理やり剥がされる
…もっと丁寧に扱えっての
仮にも女子だぞ
「…爪、跡?」
「も、もういいでしょ。
丸井くんも練習行きなよ」
「んだよそれ、は?
意味わかんねー」
「なにが…?」
「おかしいだろ。
なんで爪、腫れて」
丸井くんはブツブツと呟いては
項垂れるている
なにがおかしいの?
丸井くんが何を言いたいか
よくわからない
ただ彼の様子が
いつもと違う
「丸井く、」
「こい」
「は?」
いつか誰かにされたように
乱暴に手首を引かれ
足が、もつれる
「ちょ、どこに?」
「幸村くんとこ」
「なんで!?」
「うるせぇ!!
…ぜってぇちげぇ、大丈夫。
だって、言ってた、…」
丸井くん
情緒不安定?
いつもの彼じゃなくて
すごく寒気がする
つかまれた手首から
伝わってくる体温は
あまりにも冷たい
ねぇ丸井くん
君はちゃんと生きているの?
気づきかけてるんでしょ
お姫様に遊ばれていた事に
独占欲が強く
執着心も強い君のこと
裏切られた、なんて
知ってしまったら
きっと壊れてしまうよね
壊れた騎士なんて、王子なんて
必要とされないのに
可哀想な、王子様
君がいくら焦って
誰かに何かを伝えようとも
西崎さんは貴方を
愛してくれてはいないよ
なんて重くて寂しい
一歩通行だろうか
誰かを好きになって
少しも望みがなければ
それは諦められる理由になる
だけど君は
確信していた
彼女は自分を愛してると
皆に愛嬌を振りまきながら
それでも自分を最愛と感じていると
なのに彼女は
君を一部としか考えて
いないんだ
あまりにも今の姿は
惨めで惨めで
直視できません
私はただ、
目の前の赤毛を
哀れむように目を細めた