第19章 ビニール傘の向こう側が見えない
嫌がらせってものは
繁盛に行われていると
どうしても負担になるもので
それは少しずつ
私を苦しめてく
やってない、違う
そんな言葉は
信憑性を消していって
目に見える敵意は
心を抉りとっていくー…
「な、訳ないだろ」
荒らされたロッカーを見て
もうやれやれとしか言えない
こんな子供っぽい手口で
何がしたいんだか
今、西崎さんは
この場にいない
どうせレギュラー陣を
呼びに行ったんだろう
馬鹿だなぁ全く
私を1人にするなんて、さ
ロッカーは見事に
西崎さんのとこだけ
荒らされていた
大方、私がやったのだと
言いたいんだ
まずやる事はただ1つ
私のロッカーも荒らしましょう
どうせなら西崎さんの
ロッカーより酷く、荒く、
ボロッボロに
あははっ簡単
汚くなっちゃったロッカーの
完成です チャララ〜ン
さて、どうしようか
とにかく彼女のジャージでも
畳みながら泣けばいいか
別に彼等が涙で騙されると
思ってるわけではない
そこまで単純でもないでしょーに
だけど、私への疑わしさは
やはり薄れていくの
犯人が泣きながら
被害者を思うハズがない
そんな思い込みを
植え付けるだけでOKなのさ
ま、実際
なんもしてないんだから
犯人でも何でもないけどね
涙は目を瞑って
深く悲しい事を考えると
意外に簡単に出るって知った
…よし
じわりじわりと
雫が頬を伝っていく
私ほんとに女優にでも
なれるんじゃないの
「皆ぁー!早くー!!」
「部室が荒らされてたってのは
本当なのか!?」
「うん…。
もう、私どうしたら…」
「大丈夫。俺達が守るよ」
ほら来たよ
茶番劇のヒーローとヒロインが
俺達が守る?
そんな寒い台詞より
面白いことの1つでも
言ってみたらどうなの
あぁほんとくだらない
バァァァン!!!
「!?」
「…あ、皆…」
きっと彼等は驚いただろう
予想以上に荒れている部室
その真ん中に座り込んでいて
西崎さんのジャージを
畳んでるマネージャー
しかも私は
泣いてるんだから
どう?面白いでしょ