第16章 パーティーは0時過ぎてから
「どうしたの?切原くん」
そんな驚いた顔して
もしかして私に教える気?
貴女は襲われそうに
なっていました、って
そんな訳ないか
そこまでデリカシーなくないよね
じゃあなんでそんなに
挙動不審になるのかな
私と違って純粋な彼だから
仕方ないことかもしれないけど
「や、あの…
た、倒れたのに元気だなって!
また倒れたら困るんで
無理しないでくださいよー!」
「もー倒れないよー!」
ぎこちない笑顔
甘すぎる嘘
この優しい嘘に
どのくらいの人が
騙されるんだろう
きっと彼の様な純粋な人は
信じてしまうのかもしれない
それってなんて
素敵なんだろう
そんな世界だったら
きっと誰も傷つかないのに
なーんて
あり得ない世迷言
「あ、制服
着替えますか?」
「もー面倒だから
このまま帰る事にするよ」
「じゃ、あの
もう遅いんで、暗いし」
「え?」
「お、れが、その、
送っていきます!!!」
告白でも無いのに
顔を真っ赤にして吃りながら
必死な切原くん
あぁもうなんでこんなに
可愛いのか
肉食系のお姉様に見つかったら
すぐ食べられちゃうよ
「でも、私の家
ここからちょっと歩くし」
「蒼先輩の家って
ピヨピヨスーパーの近くッスよね?」
「あ、うん。
そうだけど…」
「俺もその辺なんで!」
「そうなの!?」
それなら案外
私たちは近所なのかもしれない
てかなんで切原くんは
私の家がピヨピヨスーパーに
近いって知って…
「あ!!」
「へ?」
「トイレットペーパー!!」
「あ…それ
覚えてたんスか」
そういえば私は
切原くんに会った事がある
かなり前に
スーパーで!!!
だから私の家が
ピヨピヨスーパーに近い事
知ってたんだ 納得
「あの時切原くん
すいません!とか言いながら
走って行っちゃったよね」
「そ、そうでしたっけ?」
「うん!
そっかーあの時
会ってたんだー」
私が独り言のように言うと
切原くんは一瞬だけ
違う顔を見せた
少し寂し気な
そんな顔
でも気づかないフリをした
私はなんなんだろう