第15章 正直者が涙を零す世の中ですね
焦っているせいなのか
鍵がしっかり挿さらない
落ち着けって俺
早くするんだろ
やっとのことで入った鍵は
少しだけ俺を安心させた
カチャリ
開いた…!!
「蒼先輩!!」
名前なんて、気にしてる余裕なかった
目の前で広がってる光景が
驚愕すぎて固まってしまったから
赤い髪がよく目立つその人は
誰かに跨りその人の手を器用に抑え
こちらを睨んでいる
その人の下にいるのは
いつもキチンと着ている服が
乱れまくっていて
気を失っている、大事な人
言葉が出ない
目の前が真っ赤に染まる
「アンタ…なにしてんだよ!!」
「ちっ。今からいいとこ
だったのによぉ。
空気読もーぜ赤也ぁ」
「ふざけんじゃねぇ!!!」
ニヤニヤと笑うそいつの胸倉を
思い切り掴んで立たせる
それでも苦しそうな顔一つせず
冷たい目で俺を見るこの人は
本当に狂ってしまった
「いくら…蒼先輩が
気に入らねぇからって
やっていい事と悪い事があんだろ!?」
「…俺達に必要ねぇやつに
なにしたって関係ねぇだろぃ?」
「なに言ってんだよ!!」
「こんな奴いらねぇ。
俺には、俺達にはエリナがいれば
それでいいんだ」
だからこいつは
いらない
まるでそれは
飽きた玩具を見る
子どものような目で
俺の上がった体温は
急激に冷えていった
「この人は…アンタらに
何か迷惑かけたのか!?」
「あぁかけたね。
存在が迷惑」
「なっ…!?」
丸井先輩はそう吐き捨てると
俺の手を無理やり剥がし
部室を出て行った
もう、なにがなんだか分からない
ただアイツが
西崎が来る前蒼先輩は
嫌われてなんかいなかった
それどころか
女の話なんてしない先輩達から
たまに話を聞くほど
よく飴を食べている変な面白い奴が
クラスにいると仁王先輩が言っていた
のはそう前の話じゃない
丸井先輩だって
たまに見える寝顔が意外に可愛い
なんて言ってたのに
なぜここまでこの人は
嫌悪されているのか
倒れこんでいる蒼先輩を見て
俺が今するべき事を思い出した
蒼先輩を
保健室に連れていかなきゃ…!