第15章 正直者が涙を零す世の中ですね
今日も憂鬱な気分の
部活が始まる
ちょっと前までは
あんなに楽しかったのに
どれほど暑くても
コートを駆け回るのが
鋭いボールを返すのが
強い相手に勝つことが
楽しくて仕方なかったのに
あの女が来たせいで
俺の生活は一変してしまった
まぁ今は
蒼先輩がいるから
少しはましだけどさ
…できればいつも名前で呼びたいけど
恥ずかしくて本人には
苗字でしか呼べない情けない俺
「よっ!赤也!」
「…うっす」
蒼先輩どこかなーなんて
コートをキョロキョロしていると
俺の大っ嫌いな
香水の匂いを纏いながら
あの女はやってきた
西崎エリナ
その髪の色もデカすぎる目も
完璧すぎるスタイルも
俺は嫌いで嫌いでしょうがない
だってこいつのせいで
先輩達はおかしくなったんだから
大体、仲良くもないのに
名前呼びなのがうぜぇ
お前に呼ばれるより
蒼先輩に呼ばれたいっつの
「赤也ぁどうしたの?
眠たいの?」
「や、なんもないッスよー」
「でも顔が疲れてるって感じだよ?」
お前のせいだよ!!
とは流石に言えないよなー
丸井先輩とか部長とか
こっちめっちゃ睨んでるし
こんなやつのどこがいいんだが
ぜってぇ蒼先輩のほうが
可愛いし…って
俺さっきから
蒼先輩の事しか考えてねぇじゃん!?
うわ、恥ずっっ!!!
「赤也、顔赤い…。
なんでぇ?」
「な、なんでもないッスよ!」
じゃあ、練習してくるんで!と
半ば叫ぶように言って
西崎から離れた
俺どんだけだよ…
顔あっつ…
「なーに顔赤くしてんだよぃ?」
「うぉ!?
ま、丸井先輩…」
やば、今一番会っちゃいけない
人に捕まった…!
逃げようと思ったけど
肩をガッツリ組まれてて逃げれない
冷や汗かく俺に
丸井先輩はニヤニヤ笑いながら言う
「言っとくけどエリナは
競争率高いからな!
お前には渡さねーぞ」
「は、はぁ?!」
「んな動揺して…。
バレバレだぜ赤也!」
じゃあまー頑張ってみろよ、と
ガムをクチャクチャさせながら
丸井先輩は歩いていった
誰も興味ねぇよあんなやつ!