第14章 砂糖菓子で出来た刃
「どうかした?」
平常心
平常心だ
慌てたところを見せたら
何されるか分からない
なんで鍵締めたか知らないけど
そっちの方が都合がいいって事だよね
焦る気持ちを抑えて
声が震えないように
「お前さーいつになったら
マネージャーやめんの?」
丸井くんの声は
呆れているような
怒っているような
聞いたことない声だった
やば…ちょっと怖いわ
「なんで辞めないといけないの?」
反論の意を込めて
彼をまっすぐ見つめる
だが彼から返ってきた言葉は
狂気に満ちた言葉
「俺たちにはエリナだけでいいんだよぃ。
如月はいらねぇ」
「わ、私だって
入りたくて入った訳じゃ…!」
「じゃあ今すぐ辞めろよ?」
「先生が許してくんないんだって!」
彼だって知ってる筈なのに
なぜ急に
私にやめて貰いたがる?
さては西崎さん
何か吹き込んだのか…?
「知らねぇって。
早く辞めた方がお前の為だぜ」
「何言って…」
「俺は気が長くねーの」
ドンッ
「っ!?」
何が起こったかなんて
分からなかった
0とも言える
近い距離にある丸井くんの顔と
私の塞がれている口が
現実味を消していく
強い力で壁に押し付けられ
背中がズキズキと痛い
だけどそれを忘れてしまうくらい
私は今、パニックになってる
「っ、んっ!」
声が出ない
感じた事のない柔らかい物が
私の唇と重なってる
せめて口は開けまいと
彼の胸を押しながら歯を食いしばった
だけど、無理矢理こじ開けようと
いうのか舌をなぞらせてくる
不快感で力が抜けそうだ
「抵抗なんて…無駄なんだよ」
「いっ…!!」
ガリっと痛々しい音がして
唇に激痛が走る
それを待ってたと言わんばかりに
ぬるりと舌が侵入してきた
歯や舌を絡めとられ
息ができない 苦しい
気持ちよさなんてあったもんじゃない
私の強ばった身体は
ゆっくりと力が抜け始め
壁に押し付けられたまま
座り込んでしまった
すると彼が顔を離す
伸びた銀色の糸の官能さが
気持ち悪くて吐きそうだ
「俺さ聞いたんだよな。
女って何をされたら
一番辛いのか」
にやりと怪しげに微笑む
丸井くんの台詞に
私は絶望しか感じられなかった