第12章 銃声で僕らは駆け出した
とりあえず、切原くんに
連絡してみよう
ケータイを取り出し
皆知ってる緑のアイコンを引き出す
そこから切原くんを探し出し
トークを開いた
さて、なんて言おうかな
簡潔に伝えればいっか
『私、テニス部に
入る事になっちゃったー。』
トン、と送信すると
1分も経たないうちに
既読の文字がついた
え、早い
『は!?まじッスか!?
男子テニス部ッスか!?』
私はトークを開いたままだったので
自然と既読はすぐ付いたはず
担任…なんて言ってたっけ
あ、そうか あの後
男子テニス部のマネージャーとか
言ってたわ
『あーうん。そう言ってた』
『まじすか!!
俺的には嬉しいですけど…!
西崎が怪しいッスね汗』
「え…」
え、なに
俺的には嬉しいって
彼は天然タラシなのか
そんな事言われ慣れてないから
照れるじゃないか
まぁでも、うん
社交辞令ってことは
分かってますよ!うん!
そこは置いといて…
『決定事項って言われたから
入るしか無いんだ…。
今日の放課後から行くね』
『大丈夫ッスよ!
俺が如月先輩守るんで!
安心してください!』
「はぁ…」
ありがたいけど、なんだろう
ムズムズする
異性にそんな事を
言われなくてガラにもなく
トキメいたりしてんだろーな私
とりあえず
ありがとう。頼りにしてるね、と
無難な文を送ってケータイをしまった
それよかみぃちゃんに
何て言えば良いんだろう
絶対驚くだろうな…
また心配させちゃうかも
それは申し訳ない
でもバレずになんて無理
彼女はテニス部ファンクラブ会長
噂なんてすぐ耳に入る
それだったら早く言おう
自分で言ったほうがいいよね
ごめん、みぃちゃん
好き勝手に色々やっちゃって
でもいつかみぃちゃんを悩ませてる
種を摘んでみせるからさ
ね?それまで
応援して欲しいんだ
不可能って分かってるけど
廊下を走って走って走って
足を必死に動かして教室に戻る
はぁ、はぁ
息が切れて苦しい
でも、少しでも早くみぃちゃんに
「み、みぃちゃん!!」
「あ、蒼!早かったね。
そんな急いでどうしたの?」
「あのね、私ね…」
テニス部のマネージャー
やることになっちゃったよ