第11章 ジョーカーの麗しき嘘
切原くんの体温が
嫌でも伝わってくる
ぎゅうっと
締め付けられる様な感覚
なのに無理矢理で無くて
優しさに溢れてるこの感じ
くすぐったくて
恥ずかしすぎて
何も言えない
「俺、許せねぇッス。
あいつの事」
「き、きりは…」
「如月先輩を泣かせるなんて
俺、腹立ちすぎて
頭おかしくなりそうなんスよ」
「え、え」
「そんなんに惑わされて
練習怠ってる先輩達もおかしい」
「あいつは俺の大事なもんを
全部、全部狂わせてる」
「…許せねぇ…」
ツブしてやる
そう言い放った彼の目は
真っ赤に充血していた
その姿は恐ろしすぎて
思わず背筋がゾクリと震える
「如月先輩」
「は、い?」
「もし先輩が少しでも
西崎の事少しでも恨んでるんなら
俺に協力してくれません?」
「協力…?」
「あいつの本性を
ぶちまけて、ツブします」
あぁ彼は、哀れだ
あんな女のせいで
腸を煮え繰り返されて
苦味を味合わされている
そんな彼が可哀想で
あまりにも辛そうで
ただ、ただ
不憫だ
「…いいよ?
それで切原くんの気がすむなら」
「いいんスか?」
「うん。私だって
切原くんの役に立ちたい」
だって彼はこんなにも
私なんかを助けてくれたから
恩返ししないと
まぁ?彼が何もしなくても
私は本性暴いていた訳ですが
そこは触れない
これで舞台は整った
私が彼女を恨む理由はできたし
それによって何をしても
切原くんという協力者がいる
西崎さんは今
絶頂期を迎えている
でも、それは
永遠に続かない
永遠どころか
すぐに消えてしまう
儚い夢みたいなもの
彼女が作り上げたのは
砂上の城の如く
脆い偽物だったのだ
それをたっぷりと
理解させてあげようじゃあないか
バカな彼女でも分かるように
丁寧に少しずつね
可哀想な西崎さん
早くその顔を
絶望で沈めたい
それができたらね
心の底から
嘲笑ってあげるよ