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道化師恐怖症。

第10章 白薔薇はペンキ 赤薔薇は血で




「へ?」


あまりにもマヌケな声が出たが
そんな私は悪くないと思う

だって、え
切原くんどうしたの


「俺、前に
先輩に助けてもらって…。
その恩返しがしたいんスよ!」


キラキラとした目で言われるが
私の中で彼を助けた記憶が
はっきり言って無い

それは本当に私なのか
人間違えじゃないのか


「…ごめん。それ、私
覚えてないみたい」


そう言えば切原くんは
目に見えて落ち込んだ

あ、ちょっと可愛い


「で、でも
本当に如月先輩でした!
だから、その」

「守る、守らないの前に
私は西崎さんの事を
怖がってなんてないよ」


金坂さんはもうここにいないし
私が怖がる理由はない

でも切原くんは納得いかないらしく
首をブンブンと横に振った


「じゃあなんで苗字なんスか」

「え?」

「怖がってないもないのに
なんで西崎先輩の事を
苗字で呼んでるんスか?」

「っ、それは…」


まぁ名前で呼びたくないという
だけなのだが

それを言うと余計に変に思われるので

さてなんて言おう


とりあえず言葉に詰まらせておけば
切原くんは疑うように私を見る

凝視とは、まさにこのこと


「俺は絶対
如月先輩の味方ですよ」

「っ…」

「俺には…怖がってるようにしか
見えないんス」


切原くんにそう映ってるのか
不思議なものだ

仕方ない
本音を交えて話そう


「あのね、私の気のせいだと
思うんだけど…。
時々、西崎さんから凄い視線感じてさ…」

「視線?」

「…うん。
でもそんなこと気のせいだって
思いたいんだ…」


ははっと自嘲気味に笑う

これで切原くんは納得して
くれるのだろうか

してくれないといい加減
少し面倒くさい


「あの人ならあり得るッスよ」

「な、んで?」

「だって俺聞きましたから!
あの人が逆ハーがどうとか
言ってるとこ!」

「ぎゃ、逆ハー?」


そうか西崎さん
口滑らしてたんだ

なんてバカなことしてるんだろ

でも、かなり面白いことになってきた

最高だよ、全く





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