第10章 白薔薇はペンキ 赤薔薇は血で
「私は別に
貴女を責めたい訳ではないんです」
責められる意味もないしね
そんなこと分かってるよ
「ただ、自分の中でどうしても
納得ができなくて…。
紳士というものが女性を泣かせて
しまい、何と言えばいいか」
「言葉なんて…いらない。
金坂さんが暴力してきた理由も
私には分からない」
分かりたくもない。
そう言えば柳生くんは
理解してくれたようだった
「本当にすみませんでした。
…如月さんになら私の話を
聞いてもらえそうですね」
「は、なし…?」
「はい。
聞いて頂けませんか?」
なんの話か
聞く以外選択肢話無い
がっつかないように
遠慮がちに頷く
「私は…金坂さんの事を
あまり良く思っていませんでした。
高すぎる自己評価と傲慢な態度。
全てが癇に障ってしまって」
「それでも西崎さんが来てから
金坂さんは変わると思ったんです。
自分より上の人を見れば
落ち着くであろうと」
「結局…こんな結果でしたが」
これは、柳生くんの愚痴?
だったら聞くのに問題は無いが
メリットは一つもない
ただ眉を下げて彼をジッと見つめれば
彼は私の心の中を察したようだ
察したとしても
本音には気付いていないけど
「金坂さんが何をしたかったか。
それを知って柳生くんはどうするの?」
「え…?」
「知ったところで…
もう何も変えられないでしょ?」
あぁ私の裏側が
チラチラと顔を見せる
いいや、金坂さんのせいで
性格が変わった事にすれば
それで、みんな納得する
「何もかも事実だもん。
覆せないよ。
それなのに、それを知って
柳生くんはどうしたかったの?」
「私は…私は…」
「もう、いいかな?
…私、平気じゃなかったみたい」
スッと立ち上がり
柳生くんに背を向ける
甘ったれで過去にすがって
今を見ない男の話など知らない
興味ない つまらない
柳生くんはその程度だったのか
人間の気持ちなんて分かんないもの
それに付き合うほど
今の私は暇じゃないんだ
さっさと生徒会室を出ようと
扉に手をかける
すると、力を入れていないのに
扉が大きく開いた
「へ?」
「柳生先輩!
どうしたんスか!?」
入ってきたのは
切原くん
切原くんは私を見るなり
口をあんぐりと開けて立ち止まった