第10章 白薔薇はペンキ 赤薔薇は血で
SHRが終わってすぐに
教室を出る
そういえば柳生くんは
場所を指定しなかった
どこに行けばいいんだろ
屋上?空き教室?
「如月さん」
「わっ!?
あ、柳生くん。ビックリした…」
「驚かせてしまい
申し訳ありません。
いいですか?」
「うん。でもどこに行けば?」
「この時間なら
生徒会室には誰もいません」
「授業始まるもんね。おっけ」
授業前に2人で歩いてたら
絶対ファンの人に怪しまれる
そのことは柳生くんも
しっかりと分かっている様子
助かるなぁ
「こちらへどうぞ」
「ありがとう」
昨日入ったばかりの生徒会室は
当たり前だけど何も変わっていない
適当なパイプ椅子に腰をかける
「…授業をサボらせるような事をして
本当にすみません。」
「大丈夫だよ!
そんなに大した事じゃないし」
「どうしても如月さんと
話をしてみたかったんです」
「柳生くんが私と?
何だか光栄だな」
話す、じゃなくて
探りたかったんでしょ
柳生くんの目
アレは何かを疑っている目
すなわち私が普通の女子で無い事を
見抜いているのだ
だけど私はシラをきる
こちらの手札を簡単に見せたら
ババ抜きは成り立たないからね
この場合、ジョーカーは
西崎さんでいいのかな?
「なんの話をするの?」
「金坂さんについてです」
金坂さんの名前を出された瞬間
私は軽く肩を震わせた
あそこまでされて
怯えが無いのはおかしい
ほら、私って演技派
「金坂さんが?」
「何故彼女が貴女に暴力をふるったか。
私には分からないんです。
確か貴女はエリナさんと仲がよろしい」
「…そんなの私に
分かると思ってるの?」
俯きながら耐えているのを
見せるかのように
更に肩や声を震わせる
「分かるわけないでしょ…?
急に…叩かれて、蹴られて
痛い思いをして」
「如月さ…」
「柳生くんは私が
西崎さんと仲が良いから
あんな事になったって言いたいの?
じゃあ、私が…悪かったの!?」
頬が濡れる
何か分からない気持ちが募って
涙が溢れ出した
「ただ…西崎さんと
仲良くなりたかった…」
嘘ばかり出るこの口は
もう止められない