第9章 弱虫で強がり怯者
「はぁ…」
ベットから起き上がると
外の涼しさで体が少し震えた
もうこんな時間
早く戻ろう
あぁ、それにしても
誰もいない保健室というのは
なんだか不思議な気分にさせる
消毒液や湿布の独特な匂いが
小さく鼻をさして…
それでも不快感は生まれない
名残惜しむように
保健室を後にした
階段を登ると
まだ体の節々が痛む
ズキズキと鈍く響くこの感じは
やはり辛い
だけど、我慢できるよ
これからこんな痛みが消えるほど
素敵な事があるんだから…
「蒼!?」
「え?あ、みぃちゃ…」
教室から迎えに来てくれたんだろうか
少し息をきらしながら
みぃちゃんが階段の上から
私を見下ろしていた
と、思った瞬間
私はみぃちゃんに
ギュッと抱きしめられた
うん、痛い
めっちゃ痛い
「無事で良かったよぉぉぉ!!
バカ!蒼のバカ!!」
「ごめん…。
でも私、悪くないよね」
「心配かけて!!」
「す、すみません」
これだけ怒ってくれるというのは
それだけ情があるということで
素直に嬉しく感じる
でもみぃちゃん
やっぱり…苦しい…
「もう大丈夫なの?」
「うん。いっぱい休んだし!
後は帰るだけだしね」
「そう…。無理しちゃダメよ?」
「ありがと、みぃちゃん」
みぃちゃんの横に並びながら歩くと
周りからチラチラと視線を頂く
もう噂として駆け巡っているらしい
金坂さんは退学した訳だしね
そりゃあ噂にもなるか
だけどその野次馬精神溢れた視線は
いささか気に入らない
浴びれば浴びるほど
イライラと何かが高ぶる
あの人は…西崎さんはこんな視線さえ
快感に感じるのか
そこは凄いと素直に尊敬
私には無理
けど、廊下の視線なんて
まだまだ良いものだった
教室に入れば男女問わず
どわって押し寄せてきて
上辺だらけの言葉ばかりを
投げかけられて
神経に障る
大丈夫?とか
大変だったね、とか
思って無い事をそこまで言えるなんて
素晴らしいよ貴方達
西崎さんの反応はどうか伺えば
やはりこちらを悔しそうに
睨みつけるように見ていた
…しかもテニス部2人組が
こちらに近づいてきた
おや、これは意外