第7章 二頭追うだけじゃ物足りない
大きくなってくる足音
金坂さんがもう一度
拳を振り上げようと構えた時
やっと気付いたようだ
誰かが来たことに
誰なんだろう
私は座り込んでしまったから
顔が見えない
でも、ジャージ来てるから
レギュラーなハズ…
「あ、あ、…」
「なに、してるんスか?」
この声…は切原くんか
なんで彼がここに来たのか
大方先輩である
丸井くん辺りに見てこいとでも
言われたのかな
でも切原くんかぁ…
私嫌われてる可能性あるからな
大丈夫かな
「べ、つに何も…」
「…?誰か…」
「ちょ、喋んな!!」
「誰か居るんスね」
切原くんが金坂さんをどかし
私の姿を捉える
わざとらしくビクッなんて
肩でも震わせた
叩かれた右頬を覆い
いかにも怖がってる風に装い
切原くんを見つめる
切原くんは私を見つけ
驚いたように目を見開いた
やはり嫌われてるか?
でもそんな感じじゃない
切原くんは私を見てから
また金坂に顔を向けた
切原くんの表情は見えない
だけど、とんでもない顔をしてる
気がしてならない
だって金坂さんの顔が
青ざめてるから
「アンタ…なにしてんの?」
「な、なにも…」
「じゃあなんで如月先輩が
座り込んでんの?」
「し、知らな…」
「んな訳ねぇだろ!?」
ヒッと金坂さんが悲鳴をあげる
かなり驚いた
なんで切原くんは
私の名前、ってか苗字を知ってる?
それで何故そこまで
声を荒げる?
頭の中がグルグルするが
そんなことを考えてたら話に
置いていかれそうなので
ちょっと切り替える
「答えろよ!」と切原くんが
金坂さんの肩を掴んだところで
今度は私が声をあげた
「待って!切原くん!」
「…」
静かにこちらを振り向く彼
あれ、思ったより
普通の表情じゃないか
なんであんなに怖がったんだろう
金坂さんは切原くんが
私に気を取られたスキに
逃げて行ってしまった
私的には別に構わない
切原くんともお喋りしてみたかった
「…ごめん」
「なんで、先輩が謝るんスか?」
「いや、切原くんが話してたのに
遮っちゃったから…」
「…全然大丈夫ッス」
「そ、そっか」
流れる沈黙
え、なになになに
どうしたらいいの!?