第7章 二頭追うだけじゃ物足りない
「うわーお…」
やはり来なければ良かったと
今更思った私です はい
これは西崎さん効果なのか
前にもましてファンが増えてる
ファンが増えてるってことは
その分奇声…じゃなくて歓声も
増えてる訳で
かなり五月蝿い
耳に突き刺さってくるような
音は不愉快でしかない
この音に耐えるには…耳栓?
でもそんなの持って無いしなぁ
あ、イヤホンがあったわ
これでいいや
カーディガンのポケットから
イヤホンを取り出し、装着する
好きな音楽をうっすら流すと
幾分かマシになった
ホッと一息ついて
テニスコートを見回す
私が興味あるのは
レギュラーなどではありません
えぇありませんとも
今日の目的は金坂さん
さて、彼女は仕事をどこで
しているんだろうか
陰でコソコソやってるかな
マネージャーさんが仕事をする
スペースに足を運ぼうとすると
テニスコートから
なにやら悲鳴が聞こえた
キャッ!!みたいな
この声は…金坂さん
人混みに紛れながら
テニスコートに近づく
そこにはボール拾いをしている
金坂さんにボールをぶつける
レギュラー達
正確には
丸井くん、仁王くん、幸村くん
ちゃんと練習しているのは
真田くん、ジャッカルくん、切原くん
…でも心ここにあらずって感じ
真田くんとジャッカルくんは
柳生くんと柳くんはー
金坂さんに冷たい言葉を
浴びせ続けてる
邪魔だ、とか そんなの
見事に味方いないじゃん
ドンマイですねー金坂さん
身体中にあんなテニスボールが
高速で当たればそりゃ痛いわ
痣なんて沢山あるだろう
もう肌の色なんて正常では
無いんじゃないの
可哀想、なんて言葉にするのは
とてもとても簡単で
思っていなくとも口に出せる
ただの音として発せれる
可哀想ね、金坂さん
でも皆そんなことを
微塵も思ってはいない
あんなのは当然
自業自得なんだから
確かに金坂さんの態度は
腹が立つものだった
けれど、ここまでされるなんて
少し割りに合ってない
さてさてさて
相変わらずぶつけられてる
金坂さんに目をやる
その時パチっと
金坂さんと目が合った
その時の金坂さんの目は
まるで死んだような輝きの無い瞳から
神様が自分のところに来たような
希望を持った瞳に変わった
嫌な予感です