第31章 目覚めの珈琲はいかがですか
「前城にもらったのか?」
「...あ、あー!そうなんスよ!
これあげるって!」
「なにもらったんだよ。
お前も隅に置けねーなぁー!」
「さぁ?まだ中見てないんで
分かんないッスねー!
それより部活ッスよ!先輩!」
さすがにテディベアをもらった
とは言えねぇ...
とりあえず誤魔化せたからいっか!
「集合!!!!」
部長の声で全員が集まる
このスピードだけは
前と何も変わらないのに
「今日は基本練習。
軽くアップを済ましたらペアで
打ち合ってくれ。ダブルスでもいい」
「「「はい!!!」」」
「じゃあアップ!!
...その前に赤也」
「はい?」
今日はいつもより速く走るぞー
なんて思ってたらまさかの呼び出し
部長直々なんて
正直、悪い予感しかしない
「なんですか」
「如月さんは今日も休みかい?」
「同じ学年の部長らの方が
知ってるんじゃないッスか?」
「俺はクラスが違うしね。
何かあったのか、前城さんに
聞こうと思ったけど睨まれるんだ」
そりゃそうだろう
あれだけ蒼先輩を大事にしてる
前城先輩から見たら
部長たちは憎む存在でしかない
むしろ笑顔で応えてもらえると
思ってたとでもいうのか
「俺たちのファンクラブも
作ってたっていうのに。
こうも手のひら返されちゃね」
「...それ、部長が言えますか?」
「何が言いたいんだい」
あれだけ西崎にべったりだったのに
アイツが裏切ってたと知れば
少しの迷いもなく見限ったのに
自分の非を認めることなく
今もこうしているのに
ただ、蒼先輩だけが
傷ついてると知らないで...
「...別に。蒼先輩は
体調不良だと思いますよ。
あれだけの事があったんスから」
「まぁそうだろうね。
だから俺たち、御見舞に行こうと
思ってるんだ」
「は?」
「早く良くなって欲しいからね」
なに言ってんだこの人
自分だって暴力を振った一人で
あるというのに
御見舞?早く良くなってほしい?
ふざけんな
「蒼先輩がアンタらに
会いたいわけないだろ!?」
「そんな事、赤也には
分からないじゃないか」
所詮、他人だもの
そう言った幸村部長の目は
笑ってなんていなかった