第31章 目覚めの珈琲はいかがですか
「アンタらよりは分かるんですよ」
「ははっ!分かった気に
なってるだけだよ」
「うるせぇ!!んな事言われる
筋合いなんてねぇ!!」
「先輩に対してそんな口のきき方
いいと思ってるのか?」
「今は関係ねぇだろ!!!」
確かに、所詮俺たちは赤の他人だ
恋人同士になったからって
蒼先輩の気持ちが
全て分かるようになるわけがない
しかも今あの人は眠ってるから尚更だ
だけど、それでも
「罵倒してきたり暴力ふるってきた
人たちに会いたいなんて
絶対思いませんよ」
「俺だって被害者だよ。
被害者同士、仲良く出来るさ」
「部長...アンタほんとに、
変わりましたね」
こんな人じゃなかったのに
他人にも自分にも厳しくて
それでもすっげぇ優しくて
あったかい人だったのに
思い出すとまた、涙が出てきそうで
俺は部長に背中を向けた
「いまは蒼先輩より
無断欠席の西崎なんじゃないッスか」
「あんな奴が何処にいようと
何をしようと俺には関係ないさ」
そうやって、野放しにしてるから
あの人が...
そんなこと言っても仕方ない
俺はそれに返事することなく
アップをするため
副部長たちがいる所に走った
「遅かったな赤也」
「すんません!部長に
捕まっちゃいました」
「...大丈夫か?」
「はい!アップ待っててもらって
ホントにすんません!!」
俺にこうして話しかけるのは
副部長とジャッカル先輩だけ
ほかの先輩たちは、
気まずそうな顔をして別の方を見ている
このままでは駄目だ
ほんとに、勝てるものも
勝てなくなってしまう
俺にとっては恨むべき人たちだけど
テニスの時だけは切り替えなきゃ
俺は、勝ちたいんだ
今まで頑張ってきた
俺はまだ来年があるけど
この人たちは今年が最後
なんとしても勝ちたい
王者の名を奪われたくない
だから、今だけ
今だけ
「ちょっとー!丸井先輩!
今日は何も言わないんスかー!」
「え、は」
「いっつも天才的だのなんだの
うるっせぇーのに」
「なんだとこのやろ!!」
「柳先輩もデータどーなったんスか!」
「あ、あぁ」
「柳生先輩の紳士は!?
仁王先輩のイカサマはー!!」
「だ、誰がイカサマじゃ」
全部、勝つ為だ