第30章 わざと掛け違えたボタン
その日から俺は、さらに
エリナを求めるようになった
彼女が正しいんだと
彼女が俺の全てなんだと
自分自身に刷り込むかのように
「エリナ...愛してるよ」
「エリナも精市のこと愛してる」
所詮、ガキの戯言だ
それでもいい、なんでもいい
彼女の口から俺が求める言葉が
出てくるのであれば
毎日、毎日
嫌というほど言わせ
嫌と言うほど吐いた台詞は
俺を安心させるのに充分だった
「...ん?蓮二、エリナは」
「まだ見ていない。
洗い物でもしてるんじゃないか」
「そんなもの如月に
やらせておけばいいのに...」
すぐ近くに愛しのあの子がいない
それだけでイライラするし
部活に集中なんて出来はしない
面倒な雑用はあいつに押し付けて
俺の傍にいればいいんだよ
エリナの仕事は
それだけでいいんだから
「...まって、ということは
エリナが危険じゃないか」
「あぁ...如月も同じ場所に
いてもおかしくないな」
「チッ。蓮二、丸井たち呼んできて。
俺は真田のところ行ってくるから」
「わかった」
急いでエリナの所に行かなければ
またあいつが彼女を泣かせる
その前に、赤也たちは邪魔だからな
「真田、俺たちは外周してくるから
3人と他の奴ら使ってやってて」
「それならば俺たちも...」
「いいから。やってて」
有無を言わせず背中を向ける
いらないんだよ
無駄な正義感もってるお前らは
正しいものを守るんだから
多少の暴力は必要なんだ
ほら、よくあるスーパーヒーローも
敵を殴るし蹴るだろ?
同じだよ
「幸村くん!!早く行こうぜ!!」
「そうだね、急ごう」
俺は正しいよ
愛しいエリナを守るから