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道化師恐怖症。

第30章 わざと掛け違えたボタン




「...どうしたんだい赤也」


落ち着け、焦りを気づかせるな

大丈夫だ
敵を気にする馬鹿がどこにいる


「え、っと!そう!
蒼先輩が貧血で倒れたので
保健室に連れていきます!!」


嘘だ、貧血だなんて


...無理やり丸井に襲われて
気絶してしまったのか

しかしここで嘘だろ?と
言うわけにもいかないし
赤也を引き止めても怪しい


「分かった。行っておいで」

「はい!!!」


赤也は元気よく返事をすると
急いで、けれどアイツを落とさないように駆けていった


心臓がドクドクいってる
なんでこんなに鼓動が早いんだ

大丈夫なはずなのに


まるで落ち着きを取り戻すかの
ように、エリナを見る


「...!!」


彼女の顔は、憎悪を隠しきれない
という表情だった


なんで、そんな顔を


「なんで...アイツなのよ。
赤也はなんでアイツをお姫様抱っこ
なんてしてるのよ。
しかも名前で呼ぶなんて...」

「エリナ...?」


俺が名前を呼ぶと
俺が近くにいる事に気づいたのか
にっこりと微笑んだ


「なぁに?精市」


それが、どうしようもなく

怖かった


「いや、なんでもない」

「変な精市」


きっと、問い詰めては
いけない気がする

聞いてはいけない気がする


じゃないと俺が

壊れそうだ


「はーあ」


部室の方から、疲れた声で
丸井が歩いてきた


「丸井。どうなった?」

「あと少しでナイト様の登場。
失敗しちまった」

「...そう」


と、いうことは
未遂に終わったのだ

その事にホッとする



...なんで、俺は今ホッした?

如月が襲われなかったから?


違う、違う!!!

そうだ、人を襲うなんて非道徳的な
ことを彼にして欲しくなかったんだ

そう。きっとやっていたら
彼は後に後悔しただろうから


そうだ、そうなんだ

そうに違いない
そうに決まってる


エリナだって大切だけれど
チームメイトも大切だから



...じゃあ俺は今
エリナより丸井をとったのか?


違う、そうじゃない
そこに上も下もない

二人とも大切だ
だから、だから...!!!





...

もう、ぐちゃぐちゃで
正解がわからない


誰か教えてくれ...







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