• テキストサイズ

道化師恐怖症。

第29章 拝啓、透明な君へ




私は私の選択に
何も後悔なんてしていない

...なんてかっこいいこと
言えるほど素晴らしい人生は
送ってない


失敗だってあったし
それを気に病むことは沢山あった

こうすれば良かった

あぁすれば良かった

もうどうしたって過去なんだから、と
簡単に切り替えていえるほど
できた人間でも無いし


きっと、中途半端な人間とは
私のことを言うんだね



あーなんだか頭がボーッとする

っていうかここはどこ


私、確か事故したんじゃなかったっけ

なのにここってどこ?


ふわふわしてて気持ち悪い

きっと現実じゃ無いんだ
夢かなにかだよきっとそうだ


「ねぇ」

「!?」


後ろから聞こえた声

聞いたことあるような、無いような

でも、なんで
気配なんて感じなかったのに


「ほら、中途半端な人間の分際で
調子に乗ってるから
そういうことになるんだよ」

「は?なにが、」

「大して力も持ってないのに
無駄に足掻いてみっともない」

「だから一体なんの...」


何か分からないものに
好き放題言われるなんて、腹立つ

イライラをむき出すように
乱暴に振り向いた


けど、そこにいたのは


「私...!?」


紛れもない、自分の姿


取ってつけたような笑顔

笑っていない目

気味悪くあがる口端


見たことはないけど覚えはある


「いい加減認めて欲しいな。
蒼の中に蒼に対して
反してる意志がある事実を」

「私が...私に文句あるって?」

「そういうこと」


その、ありえない〝私〟は
1歩、1歩、近づいてくる


気持ち悪い
でも逃げられない

足が動かないとか自由がきかないとか
そんなことじゃなくて

逃げてはいけない

そんな気がした


「所詮、如月 蒼という人間も
西崎エリナを消すための
捨て駒だったに過ぎない」

「私が捨て駒...?」

「君がどんな人生を歩もうと
そうなるようになっていたんだ」


その言葉に、何故か
深く納得してしまった自分がいる

だから私は
彼女をターゲットにしたのか

だから私は彼女に
ある意味で固執していたんだ


そうなるように、なっていたから










/ 181ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp