第28章 処刑台でティーパーティー
いつだって俺は何もできない
蒼先輩が自分の道を
自分の力で進んで行くのを
指を咥えて見ているだけだ
守るなんて口先だけで
なにも守れていないじゃないか
俺があの人に
なにをしてあげられたんだ
助けられてばかりで
ただただ感情を表に出して、
あぁ、俺は
いつまで頼ってばかりなんだよ
「これから病室に移動しますので
皆さんもそちらにお願いします」
「...はい、わかりました」
先輩のお父さんの低い声
覚悟を決めたような重さが
信じたくない現実を教えてくれる
嫌だ、嫌だ
だって、やっと、俺は
「行こう、母さん。
美琴ちゃんも、赤也くんも」
「っ、えぇ」
「はい...」
そんなことを俺の頭の中だけで
仕方ないことだよな
今は蒼先輩に会いに行こう
5階の一番奥から3番目
ネームプレートが
如月 蒼様になってる
「蒼...!」
お母さん達が先輩の元へ駆け寄った
ベッドに横たわっているのが
ここからでも分かる
おそる、おそる
1歩1歩を踏みしめるようにして
蒼先輩に近づく
「ぁ...」
眠ってる
そう表現するしかなかった
すやすやと、まるで楽しい夢でも
見ているかのように
幼い子供のように
愛らしく、可愛らしく
「蒼...起きてよぉ...。
眠ったままなんて嫌よ...」
前城先輩が肩を震わせる
涙を流してるかどうかなんて
見たくない わかるから
「母さん、大丈夫だ。
この子は眠ってるだけなんだ。
生きてるんだから」
「分かってる...でも...」
蒼先輩に寄り添うお母さんと
支えるお父さん
また、俺だけ何も出来ずに
立ち尽くしたまま
「蒼...先輩」
どうして、眠っているんですか
起きてくださいよ
やっと色んな問題が片付いて
俺たちは付き合いはじめて
これから楽しいことが
いっぱいある筈だったじゃんか
せめて、俺があなたの夢の中で
あなたを抱きしめられたらいいのに
それで蒼先輩だけでも
笑顔になれたらいいのに