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道化師恐怖症。

第28章 処刑台でティーパーティー




気づいたら、俺は
県内でも有名な病院の前にいた

息が荒れて
目の前が霞む

でも、とにかく行かなければ


垂れる汗を拭って
自動ドアをくぐる

ひんやりとした静かな空気が
俺は昔から苦手だった


だって、ここにきて
いい思い出なんて一つもない

小さな頃わぁわぁと
泣いたことを思い出す

もしもまたそんな思いをしたら
どうしよう

蒼先輩になにかあって
胸が張り裂けるような思いをしたら...


俺は、俺でいられるんだろうか


「っ...」

「赤也くん!!!こっち!!」

「あ...先輩」

「早く!!!」


取り乱しながら駆けていく
前城先輩の後を追う

蒼先輩は、どうなったんですか
今どんな状態なんですか
無事なんですか


聞きたかった言葉すら
俺の口からは出てこない


「今は手術してる。
まだよく分かんないけど
頭を強くうったって言ってた」

「先輩は、どうして、」

「一緒に帰ってたんだけど
途中で分かれたの。
そしたら蒼に言いたい事忘れてて
まだ近くにいるかと思ったら...」


震えだした声に
なにも言葉をかけれなかった

きっとこの人は
すごく後悔してるんだろう
なぜあそこで分かれたのか
なぜ警戒しなかったのか

トラックにぶつかった理由なんて
考えなくても分かることだ


「アイツ...ですか」

「決まってないから何も言えない。
でもそれ以外に無いわ」

「...やっぱり」


なんでそんなに
蒼先輩の事が憎いんだろう

あの人は何もしてないのに

ただただ、そこにいただけなのに


待合い室のような所に着くと
前城先輩は置いてある椅子に
力なく座った

なんだか座る気にもならなくて
近くの壁にもたれる

赤いランプが痛々しい


「許さない...絶対に。
蒼は悪くないんだから。
アイツが、アイツが...」

「そういえば西崎は
現場近くにいなかったんスか?」

「見てないわ。
私が行った時には、大騒ぎで
近くの人が救急車を呼んでいて
そこにすぐ乗ったから...」

「蒼先輩の親さん方は」

「もう来ると思う」


俯く前城先輩に
もう喋らせることなんて出来ず

何もできない自分の
情けなさを痛感するしかなかった







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