第27章 どうぞ、こちらへいらっしゃい
その日はずっと
目の端で西崎さんを追っていた
まぁ見てて飽きない
だって彼女、少しも
諦める気が無いんだもん
暇があれば話しかけに行き
冷たい言葉を浴びせられてる
うるせぇ、うざい、黙れ
いやーこんなこと言われちゃったら
辛くて泣いちゃうわー(棒)
たまに教室を出て
どこかへ行く時があったが
決まって肩を落としながら帰ってきた
多分、幸村くんとかその辺に
会いに行って撃沈したな
それを見てクスクス笑う女子
ざまぁみろ、などと言ってるけど
お前ら同じ穴の狢
とうとう西崎さんは
誰からも好意を向けられないまま
放課後を迎えてしまった
さぞ心の中は
グチャグチャな事でしょう
...あーそういえば
部活どうしようかな
さっさと辞めようと思ってたけど
まだ退部届けもらってない
それに、どうせ今日
西崎さんはいつも以上に
使い物にならないに決まってる
そしたら赤也くんや2軍の子が
困っちゃうよね、うん
レギュラー陣は知らない
赤也くん以外どうでもいいです
...マネージャーやってる以上
最低限はやりますけどね、はは
そうと決まれば
2、3日様子見てから辞めよう
退部届けは笑顔で渡してやろっと
...
そして部活へ行ったはいいけど
いやーすごいすごい
人間ここまで手の平返せるのか
真田くん、桑原くん、赤也くんは
露骨に顔に出したりとか
ひどい言葉をかけたりはしない
多分、赤也くんは
ちょっと我慢してるな 偉い偉い
けど、ほかのレギュラー
幸村くんを筆頭に素晴らしい罵声
まず登場して早々
「なに俺達の前に現れてるの?
吐き気がするんだけど」
あんだけ好き好き言ってたのは
誰だよー!って心の中で
突っ込んじゃったよ
これこそ愛と憎しみは紙一重
っていうやつだね
「如月さん」
1人で悲しみに打ちひしがれてる
西崎さんをほっといて
いつも通りに仕事仕事
...してたら、幸村くんが
嘘臭い笑顔を貼り付け近づいてきた
私が吐き気するわ
「なに?」
「今日は暑いから
体調に気をつけて無理しないでね」
...は?
なに、私への誤解が解けたら
また仲良くなろうって?
どこまで頭おかしいの