第26章 奥深くまで愛で満たして
「そういえば手...」
「大丈夫だったよ。
骨に異常は無いみたい」
包帯のようなもので
グルグル巻きになっている右手
まだ少しズキズキするけど
これは仕方ない
昨日、あれから保健室に行ったら
先生が慌てて病院に
電話をかけてくれた
相変わらず迷惑かけちゃって...
申し訳なかったな
病院に行けば
骨に異常はないけれど少し酷い打撲
当分は安静にしてろ、とのこと
顔の腫れはすぐ引くってさ
あー良かった
「でも、これで
蒼が無理することは
一切ないッスもんね!」
「まぁ...西崎さんが
何も仕掛けて来なければ、」
「もうしてくる必要もないでしょ!」
そんなに簡単に
諦められる性分だったのなら...
いや変に考えるのはよそう
もしかしたら私が思っているより
とびきり素敵なことが起きるかも
彼女の行動は
短絡で複雑だから
私には思いつかないような事を
簡単にやってのける
だからって成功するとは
限らないんだけどさ
「...え、なにあれ」
「なんで切原くんと如月さんが」
学校へ近づいてきて
同じ登校する生徒も増えてくる
そりゃあ不思議でしょうね
テニス部に嫌われていた私と
テニス部レギュラーの赤也くんが
一緒に登校してきたら
視線や声が溢れてる
全く、ゾワゾワするよ
「やっぱ色々
言われちゃうんスね」
「皆ビックリだろうねぇ。
あー面白い」
「蒼先輩って
いい性格してるッスよね!!」
「それ褒めてる?」
「めちゃめちゃ!!!」
赤也くんのことだから
本気で褒めているんだろうな
なんて可愛らしい...
「蒼ちゃーん?」
「うわっ!??
...ってなんだみぃちゃんか」
いくら天気が良くて明るくても
後ろから急に抱きつかれれば
誰だって変な声くらい出るもんだ
ビックリしたよ
みぃちゃんは楽しそうに
ニヤニヤとしている
「朝からお暑いわねー」
「一緒に登校してるだけだよ!」
「あらあら!照れちゃって!
じゃ、お邪魔虫は先行ってるわね」
ごゆっくりーなんて手を振りながら
満面の笑みで去っていった
「めっちゃビックリした...」
「いや、私の方が」
てか、登校ゆっくりしてたら
遅刻するってーの!!!