第25章 羽と言葉を紡いで閉じて
「好きならそう言えばいいでしょ?
どうせ、後悔するんだから」
「...?」
「嫌われるのが怖い。
そんなのは当り前だけど
それで何もしなかったら身動き
とれないじゃない。
人間、何かしてもしなくても
後悔するんだから
行動に移した方が得」
得な方に動いた方が
楽になるもんよ
きっと私だって
その考えに至っていたのに
なぜか今だけ、踏み込めなかった
自分の汚さを
痛感してしまったから
多分、西崎さんと比べれば...
いや、それでも変わらない
ジャンルは違うけど
汚さは同じだ
同じ穴の狢
そんな諺が身に染みる
雁字搦めって言うかなんて言うか...
自分勝手に始めた事を
後悔する程バカではない
そこじゃないけど、そこなんだ
西崎さんとテニス部が
グシャグシャになって
それで終わりで良かった
これから彼女がどうなるかも見物
期待している
それで、それで良かったのに
自分の立ち位置が心地よかった
ただのモブが
痛いヒロイン気取りを陥れる
だって皆が食いつくのは
西崎さんかテニス部で
私はそこに近かっただけ
人は興味あるフリして近づくけど
上辺ってやつですよ、皆
そこまで嫌ってたわけでもない
最初から敵だったわけじゃない
そんな彼女を
〝暇つぶし〟でボロボロにした
そんな汚い私を
どう受け入れてもらうというのだ
あんな純粋な、彼に
身勝手にも程がある
私はヒロインなんかには
なっちゃいけない
「蒼、いいのよ」
「なにが...?」
「西崎はね?
ここに来るべきじゃなかったの。
最初に自分勝手だったのは向こう。
蒼は正しい事をしたのよ」
だから、素直に言ってきなさい
トン、と背中を押される
言葉が熱い
身体の中でジワジワと広がる
い い ん だ
こ れ で い い ん だ
中途半端にいい人ぶろうなんて
なんて私らしくない
こうなれば最後まで
したたかに生きてやればいい
いつかくる罰は
その時、受け入れればいいんだ
立ち上がって、みぃちゃんを見る
満面の美しい笑み
もう、迷いはなかった