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道化師恐怖症。

第25章 羽と言葉を紡いで閉じて




泣いてばかりじゃ
何も始まらない

泣いて何かが変わるのなら
世界はもっと平和だ


笑え、笑うんだ

ほら上を向いて
口角を上げて思いっきり

嘲りでも、いいから


「蒼!!!」


冷たい雫が頬を伝い
地面にぽたりと落ちた時

背中から聞こえた、声


「みぃちゃ...」

「っ、ばか!!!」


きっと私の顔はぐちゃぐちゃで
悲惨だっただろう

身体なんて見えてる部分も
隠れてる所もボロボロで
汚いのに


貴女は優しく抱きしめてくれる


「こんな風に傷つけて...。
なんでもっと
自分を大事にしないの!?」

「ごめ、なさっ」

「心配したんだから...!!
ほんとに、不安で不安で!」

「っ、ぐすっごめ、」

「もう!!!蒼のばかちん!」


私を抱きしめながら
少し震えてるみぃちゃん

こんなにも心配してくれたんだね

腕に込められた力が
直接伝わってきて胸が締め付けられる


ごめんね、こんなに馬鹿で


「...蒼の事だから
どうせ赤也くんでしょ?」

「え...?」

「身体の痛みの涙じゃなくて
心の痛みの涙なんでしょ?
それで、原因は赤也くんだ」


分かってるんだから、と
彼女は優しく微笑んだ

そんなにもわかりやすいのかな

本音を隠すのは得意だよ
仮面を被ればいいから

でも、みぃちゃんは
その裏側を覗き込んできちゃう

敵わない


私は肯定の意味で
首を縦に振った


「赤也くんのこと、好き?」

「...うん」

「けど、突き放した?」

「...うん」

「どうして?
赤也くんもきっと
蒼の事を好きよ?」


分かってる

彼は私の想像を超えるくらい
私に好意を抱いてくれてる気がする

なんとなく感じ取れる


だからって私が彼を受け入れたら
きっと傷ついてしまうんだ

それこそ、絶望されて
幻滅されて、嫌われて...

そんな怖いこと、私


「だって、嫌われたくないもん...」

「お互いの気持ちを明確にした後
嫌われちゃうのが怖いのね」


ただでさえ
今でさえ

私にとって赤也くんは
既に大きすぎる存在


それなのに恋仲になったら
私は縋ってしまうに決まってる

そんなこと出来ないんだよ







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