第25章 羽と言葉を紡いで閉じて
「蒼先輩は綺麗ですよ...?」
赤也くんの言葉に
首を振る
私は
綺麗じゃない 純粋じゃない
赤也くんの隣には立てないよ
君まで汚してしまいそうで怖い
「ごめんね。
きっと私は君を傷つける」
ううん、きっとじゃない
絶対
「蒼先輩は、俺のこと
嫌いなんですか」
やめてよ
そんな悲しそうな顔
嫌い?
そんなこと...あるわけが
きっと自分でも気づかないうちに
ずっと前から君のこと
あぁ溢れてしまいそう
「嫌い」
「え、」
「...って言えば君は
納得してくれるのかな?」
こんな言葉言いたくなかった
赤也くんのそんな顔は
見たくなかった
今、私が、彼に
あんな表情をさせてるんだ
その事実に吐き気がする
「しません」
「!!」
「だって、嘘じゃないッスか。
そんな顔して」
「っ!!」
嘘...だよ
嘘に決まっているじゃないか
そう言えれば楽なのに
駄目だ それは駄目なんだ
「蒼先輩」
「...なに」
「もう、嫌いでもなんでもいい。
俺が好きなことには
変わりないッスから。
けど、一つだけお願いしますよ?
〝君〟じゃなくて名前で
呼んでもらえませんか?」
そう言われて初めて気づく
自分が彼の名前を呼んでなかった事に
それさえも怖がっていたの
きっと君の名前を呼んだのなら
その後に続く言葉が
今を、私の決意をボロボロに
壊してしまうから
「お願いですよ」
「...あ、」
大丈夫、彼の名前を言うだけ
大丈夫、私は道化師だから
大丈夫、本音を隠すことは
上手になったでしょう?
「赤也、くん」
「はい」
嬉しそうにはにかむ赤也くん
ダメだ、嫌だ、どうして
「さ、よなら」
絞り出した声は
ちゃんと私の想いだった
彼の返事も聞かずに
その場を走り出す
ほんとにいつからここまで
彼を好きになったんだろうか
目から流れて滴り落ちる
この液体は何色
痛いよ
顔の傷より、身体の傷より
心ってここまで痛くなるんだ
どこ、どこ
仮面はどこ
あの笑ってる仮面はどこに落ちてる
「っ、うぁ、」
隠さなきゃ、隠さなきゃ
私は道化師
笑わなきゃ