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道化師恐怖症。

第25章 羽と言葉を紡いで閉じて




「ごめんね」


形だけの意味の無い謝罪を
呟きながら、
彼のふわふわの髪に手を伸ばす

ふわふわ、ふわふわ

柔らかいなぁ いいなぁ


「蒼先輩...」

「どうしたの?」

「もう、西崎の化けの皮は
剥がれましたよね」

「そう...だね」

「じゃあもう終わりっッスよね!?
蒼先輩が傷つくのも
終わったんですよね!?」


終わった

西崎さんの本性は
皆にバレてしまったから


これをきっかけに
彼女と彼らの仲は完全崩壊

もうこんな遊びも終わりなんだ


「終わった。
もう君は傷つかないよ」

「俺じゃなくて、」

「私が傷だらけになるのを
近くで見て、君は傷つく。
そんな事も終わりさ」


私が彼を見上げながら、
それでも焦点は君に合ってない

それに気づいたのだろうか

彼は悲しそうな顔をした


「俺は...自分が傷つくより
蒼先輩が傷つく方が嫌です」

「人間は所詮
自分が傷つくのが1番怖いものだよ。
見えないけれど、確実に
1つ、また1つと増えてく痛み。

君も気づいてたでしょ?」

「っ、...それは」


正直者な赤也くんは
こういう時に嘘がつけない

感情がそのまま表情に映し出される

そんな素直で可愛い彼だから
私は、こんなにも


「今までありがとう。
これ以上、私と一緒にいたら
君は傷つくばかりだ。
優しすぎる君だから」

「蒼先輩!!」


彼の髪から手を離し
完全に顔を逸らす

あぁ涙が出てきそう

こんな感情を私は知らない
今までこんなことは無かったから


「蒼先輩...」


私の背中に言葉をかける赤也くん

それが届くように
祈りながら言っているんだろうか


「好きです」

「...!!!」

「ずっと前から、俺は
蒼先輩が好きです」


その声色は、どうしようもない程
儚くて仕方なかった


振り向きたい

でも、ダメだよ

私は彼にまで縋ってしまう


「私は君に似合わない」

「何がッスか!そんなこと関係...!」

「純粋で綺麗な君に
汚れた私は似合わないんだよ」


心がね、違うの

薄汚れて埃まみれで
西崎さんと何も変わりない

いや、彼女よりも汚い私は
赤也くんの隣には立てないんだ





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