第23章 あぁ酸素が足りないよ
こんな理不尽な暴力に
なんで私は耐えてるんだろう
全てを諦めそうになる
もう苦しいよ、痛いよ
走馬灯…なんて綺麗なもの
見える余裕さえ与えられなさそう
「ほら、いい加減くたばりなよ」
「やっぱ顔だろぃ?」
「顔だと目立つだろう」
「生物学上では女性なのですから」
「紳士じゃのう」
なにが紳士だよ
似非にも程があるわ
あーもう、ほんとに
麻痺してきた 感覚ないって…
冷たい床が段々と
気持ちよくなってきた
もうこのまま目を瞑ってしまおう
意識が離れかけた時
響く足音が耳に届く
あぁ、もしかして…
「蒼先輩!!!」
私が彼の名前を呼ぶ前に
幸村が苦々しい顔をしながら
赤也、と呟いた
ほんとに来てくれるなんて
思ってなかったよ
「…っ、アンタら
なにしてんスか…?」
「あ、赤也?
これはね、あのね」
「なにしてんだよ!!!」
必死に西崎さんが
何か言い訳をしようとするが
激情した彼の前じゃ
全くの無駄 通じるはずも無い
「んな大勢で?
1人の女子生徒に暴力?
なにやってんだよ!!
アンタらはそんなことするような
クズじゃなかっただろ!?」
「クズ?赤也は俺達の行動が
クズだとでも思ってるの?」
「当たり前、」
「違うよ赤也。これは制裁。
愚かな女に俺達がわざわざこの拳を
使って罰して居るのさ」
「は…?」
「そうだ。
精市の言う通り俺達のしている事は
エリナを守るための必然的な事。
むしろ非難されるべきは如月だ」
赤也くんの表情で
なにが言いたいか分かる
ありえない
自分が尊敬する先輩たちが
こんなこと真面目に言うようじゃ
そう思ってしまうのも仕方ないか
皆、狂っている
正常の思考の人なんて
誰1人としていない
「っ、だったら蒼先輩が
西崎に何したんスか?」
「耐え難く酷い事ですよ」
「今だってエリナが洗い物してたのに
遅刻して入ってきて突き飛ばしたんだぜ?」
「逆にこれの何が酷くないんじゃ」
ふるふると震える彼が
あまりにも痛々しい
もしかして、例の赤目に
なってしまうのだろうか
そうしたら私じゃ
もうどうしようもない
どうにかそれは耐えて欲しい