第23章 あぁ酸素が足りないよ
「っ、あぁぁぁあ゛!!!」
今までで一番響くような激痛が
右手に走り
私の醜い声がこだまする
もう、痛いなんてものじゃない
私の右手、ちゃんとついてる?
もしかしたら取れてたりして
それは流石に嫌だよ
私、右利きなんだから
「お前が悪いんだよ?
俺たちのエリナを傷つけるから」
「っ、はぁ、はぁ」
「たった1人の女を傷つけて
楽しかったのか?如月」
「そんな底辺の人間だったんじゃな」
「最低、いえ…最悪ですね
それでも人間ですか?」
「お前なんか死んじまえよ」
皆、西崎さんに心酔してる
だから彼女を傷つける私は
害虫以下でしか無い
丸井くんから言われた
〝死〟の言葉は
発することは簡単なのに
実際、言われると
本当にそうしなければ
ならないような気味が悪い観念に
囚われる
「消えた方が楽なんじゃない?
この世からさ」
消えた方が楽?
辛いこと、苦しいこと
そんなもの求めてる人はいない
皆、逃げたがってる
その逃げる手段が消えること?
そんな馬鹿げたこと言って
よくテニス部部長が務まるね幸村くん
死ぬことは逃げじゃない
ただ、他人に何かしらで
迷惑をかけるに過ぎない
それに死んだ後がどうなるか
知らないくせに
勝手に向こうは楽だと
決め込んでいる
なんてエゴイスト
向こうが楽なのであれば
霊なんて存在しないんじゃないの
「おい!なに無視してんだよ!」
「っ!!」
逆になんで返事が必要なんだよ
少しだけぼーっとしてた頭が
暴力でまた冷えてくる
身体を動かすのは辛いけど
首だけなら…
苦し紛れに西崎さんを見る
うわ、なんて嬉しそうな顔
優越感、感じまくってる
「如月如きがエリナを見るな。
汚らわしい」
なんて失礼な台詞だよ
あ、にしても段々と
意識が薄れてきた気がする
赤也くんは来ないかな
だって、もし真田くん達が
向こう側の息にかかっていたら
なんとしても赤也くんを
ここには来させないだろう
もう、無理かも
ほんとに死ぬかも
そうなったら
みぃちゃん、赤也くん
それからお父さんお母さん
ごめんね?