第1章 プロローグ
また、嫌な夢を見た。
ねぇロー。
呼ぶな。
ねぇローってば、
うるさい。
必ず帰ってきてよね。
「はっ…!」
頭が痛い。
硬く握った拳。
じわりと嫌な汗を額に感じる。
それから引き裂かれそうな心臓。
もう一度目を閉じ深く息を吐く。
いっそ潰してしまえばいい。
そしたらこんな感情は、もう抱く事はないのかと。
いや、しかしこれは現実だ。
ノックの音が、一気に全てを自覚させる。
気だるい身体をベッドから引きずり出す。
「キャプテン、島が見えて来ました」
「…あぁ」
「上陸して…いいんですね」
「しろ」
故郷の元へ。
お前のいない景色は、俺達に何を映すのか。