第1章 出会い
こいつ…………俺が恐くないのか?
先程からこの少女は俺を恐がる素振りを見せない。
むしろ真っ直ぐ俺の目を見返してきていた。
普通、目が覚めて見知らぬ男が目の前にいたら混乱くらいするもんじゃないのか。
それが二人きりとなればなおさら。
「………………」
警戒されているわけではなさそうだが、元々無口なのか少女は何も言おうとしない。
俺もおしゃべりな方ではないので、こういうとき何を言っていいのかよくわからなかった。
気まずい空気が俺たちを包む。
どれほどそうしていたのか、結局先に口を開いたのは俺の方だった。
「……邪魔をした」
そう言ってこの場を去るしか、この空気をかえる方法が思いつかなかった。
さっさと屋上を去ってしまおうと踵を返す。
すると、後ろから突然ブレザーの裾を引っ張られた。
「………………?」
首だけで振り返ると、少女が相変わらずの無表情で服の裾を掴んでいる。
「…………私は、教室に戻る。あなたはここにいればいい」
今まで一言も喋らなかったため、少女が言葉を発した時は少し驚いた。
見た目通りの、まだ少し幼さが残る声だ。
少女は掴んでいた裾を離すと、ゆっくりとした動作で立ち上がった。
小さいな、と思う。
俺の首あたりまでしかない。
手足も細くて、普段一体何を食べているんだと突っ込みたくなる。
そんな俺の視線に気づいているのかいないのか、少女は俺の横をすり抜け声をかける暇もなく屋上から姿を消した。
しばらく呆然と立ちつくす。
………………名前を聞いておけばよかったかもしれない。
ようやく頭が上手く回りだして、俺は少し後悔した。