第1章 出会い
とりあえずどうするべきか考える。
当初の目的通りここで寝ても構わないのだが、近くに少女がいると思うと安眠できる気がしない。
もちろん初対面の相手に手を出したりましてや寝込みを襲うつもりもないが、それでも一人の方がずっと落ち着く。
場所を変えるか、と踵を返そうとしたその時、
「────ん…………」
ため息にも似た声が聞こえ、ゆっくりと少女が目を開けた。
しまった、起こしてしまったか。
マズイ。
これまで俺は女子に第一印象だけで随分と恐がられてきた。
もし彼女が俺を視界に捉えたら、返ってくる反応は目に見えている。
状況が状況だ。
もしかしたら変な誤解をされてしまうこともあるかもしれない。
入学早々に厄介な問題を起こすのだけは避けたかった。
だがそんな俺の気持ちに反して、少女の紅い瞳がゆっくりと俺を映す。
「………………………………」
無反応、だった。
もしかしたら驚きすぎて固まっているのかもしれない。
だが少女の表情から察するに、そういうわけでもなさそうだ。
何しろ少女の目は見開かれているわけでもなく、完全なる無表情なのだ。
「………………」
少女は何も言わなかった。
まるで人形のように、ただ俺をじっと見つめてくる。
ここまで凝視されるとさすがに気まずくなり、思わずフイッと顔を反らしてしまった。
「…………悪い」
とりあえず眠っていた所を起こしてしまったのだから、謝るべきだろう。
そう思い口を開くと、少女は少し間をおいたあとでフルフルと首を振った。