第3章 人気者
「…………えっと。私、何か気に障ることしちゃったんでしょうか」
不安そうに絢瀬が呟く。
八尋はそんな絢瀬を見て、にっこりと笑った。
「そんなことないよ。気にしなくていいからね」
そう言う八尋も、その笑顔はどこか沈んでいる。
「…………追いかけてくる」
俺はそう言って立ち上がった。
いつもの俺ならわざわざそんなことしないだろうが、今回は何故か気になった。
俺の行動に八尋はポカンと口を開ける。
「…………燈斗くんが自分から動くなんて珍しい……」
失礼だな。
ギロリと八尋を睨むと、なぜか微笑み返された。
「…………燈斗くん、椎名さんのことよろしくね」
「…………ああ」
俺は軽く頷くと、屋上を飛び出した。
椎名はもう教室に戻ったのだろうか。
まだ昼休みは充分残されている。
本人は教室で食べると言っていたが、そもそも椎名がいつも屋上で昼飯を食べているのは教室だと騒がしくて食べられないからだ。
椎名ほどの有名人なら、教室で大人しく昼食を終えられるわけがない。
だとしたら人が少ないところに向かったのではないか。
そんな風に頭をフル回転させながら校舎を走る。
一応教室まで来てみたが、やはり椎名の姿はなかった。
────くそっ、どこに行ったんだ……
思いきって教室に入ると、近くにいた男子生徒に声をかけた。
「おい」
「へっ?は、はい!!」
「お前、椎名がどこにいったか知らないか」
「し、椎名さん…………?」
困惑しているのだろう、男子生徒は口ごもってしまう。
「知らないのか」
「す、すいません……」
ビクリと肩を震わせて謝罪してくる。
気が弱いのだろうか。