第3章 人気者
「そーだ、今日は椎名さんに会わせたい人がいるんだよ」
「会わせたい人…………?」
機嫌が良さそうな八尋を見て首を傾げる椎名。
その時、丁度いいタイミングで屋上の扉が開いた。
「お、お待たせしました」
現れたのはもちろん絢瀬だ。
走ってきたのか少し息をきらしている。
絢瀬はこちらに近づいてきて、八尋の隣に座る椎名を見ると顔を強張らせた。
「彼女が椎名さんに会わせたかった人だよ」
「ああああの!絢瀬優奈といいます!!」
絢瀬は早口でそうらしい捲し立てると、「よろしくお願いします!」と勢いよく頭を下げた。
「……………………」
椎名はそんな絢瀬を見てさすがに驚いたのか、ぱちぱちとまばたきをしていた。
そんな二人を見て苦笑した八尋が、「大丈夫だよ」と絢瀬に声をかける。
「そんなに緊張しなくても…………」
「だ、だって椎名さんはみんなの憧れで……!
私なんかが気軽に話していい存在じゃないですし!!」
「………………」
あわあわしている絢瀬をじっと見つめる椎名。
その瞳には複雑な色が浮かんでいた。
「…………椎名、真琴。よろしく」
先程の絢瀬への返事なのだろう。
椎名はポツリと呟くと絢瀬に手を差し出した。
あまりの驚きに目を見開く絢瀬。
この手をとってもいいのか、だが取らないと失礼になるのでは───そんな心の内がこちらにまで伝わってくる。
やがて心を決めたのか、絢瀬はぎゅっと椎名の手を握った。
その様子を見て八尋がはあぁぁと大きなため息をつく。
「よかったぁぁ…………これでもう二人は友達だね」
「…………友達?」
椎名はきょとんとして、まだ握っている絢瀬の手を見つめる。