第3章 人気者
「きみ、名前は?」
いまだ女子生徒の肩を抱いたままの多紀がそう尋ねた。
異性に触れられることに慣れていないのか、女子生徒は顔を赤く染めながらも
「……絢瀬 優奈(アヤセ・ユウナ)……です」
と答えた。
「へぇ。優奈ちゃんか」
イケメンスマイルの多紀に微笑みながら下の名前で呼ばれ、女子生徒────絢瀬はさらに顔を赤くする。
「…………性悪男……」
隣で八尋がポツリと呟いたのが聞こえた。
***
結局そのまま俺たちは四人で授業をサボることになった。
俺はもともと授業を受けるつもりはなかったし、絢瀬も教室で泣いてしまい居づらかったのか授業に戻ろうとはしなかった。
八尋はただ一人教室に戻ろうと言ったのだが、結局多紀に押しきられてしまい諦めたようだ。
「……あの、荒瀬くんはいつもここでサボってるんですか?」
もはや定番となりつつある屋上にやってくると、まだぎこちなさは感じるものの絢瀬が話しかけてきた。
「…………まぁな」
普段は椎名以外の女子と話すことがないため少し緊張する。
椎名は俺をたいして恐がる素振りを見せないため普通に接することができるが、それ以外の女子は別だ。
うかつなことをして先程のように泣かれるのは困る。
「授業中でも昼休みでも、たいてい燈斗くんはここにいるから。
会いたくなったら来てみるといいよ」
八尋が「ねぇ?」とこちらに笑いかけてくる。
…………いや、俺に会いたくなることなんて百パーないだろ。
「永塚くんや中瀬くんも、ここにいることが多いんですか?」
「そうだね。昼休みはみんなでここで過ごしてるよ」
「誰も来ないと気楽だしね」と八尋は伸びをする。