第3章 人気者
「さっきのあれ、酷いよ」
「さっきのあれ?」
人気のない廊下に連れてくると、八尋は珍しく怒った顔で睨んでくる。
「プリント。
せっかくあの子が渡してくれたのに、いくらいらないからってぐしゃぐしゃにするのはないと思う」
……………………それで泣かせてしまったのか。
黙って八尋の話を聞いていると、八尋はやれやれというようにため息をついた。
「どうせ燈斗くんのことだから、なんで泣かせたのかもわかってなかったでしょ」
「………………うるせ」
「しょーがないだろうな、燈斗だし」
俺が八尋から視線を外すのと背後から声が聞こえたのは同時だった。
振り返ればこちらに歩いてくる多紀の姿。
隣にはなんと先ほどの女子生徒がいる。
「タッキーも抜け出してきたの?」
「んー、まぁ。
泣いてる可愛い女の子をほっとくわけにもいかないだろ」
そう言って多紀はさりげなく女子生徒の肩に手をまわす。
女子生徒はまだ目に涙がたまっていたが、多紀の行動に驚きつつも頬を赤く染めていた。
「さっきはこいつがごめんね?
こいつ顔は恐いし無神経な奴だけど、根はいいやつだから」
多紀がなだめるように言い聞かせる。
と、そこで女子生徒とバチリと目が合った。
まだ怯えたような目をしている彼女に、俺ははぁとため息をつく。
「……………………さっきは悪かったな」
「………………」
視線をそらしつつもそう伝えると、驚きに目を見開いた女子生徒はそのまま固まった。
おい、これはどういう反応だ。
隣では八尋が先ほどとはうって変わったニコニコの笑顔でこちらを見ている。
「気持ちわりぃな」
「ちょっ!その発言はないでしょ!!」
思ったままの感想をのべると、八尋はむぅと口を尖らせる。
コロコロ表情の変わるやつだ。
「まぁ、さ。
燈斗くんはこんなだけど、悪いと思ったことはちゃんと謝るしほんとはいい人なんだ。
だからそんなに恐がらないであげて?」
こほんと気をとりなおすと、八尋はまだ驚いている女子生徒に声をかける。
すると彼女はぎこちない動作でこくりと頷いた。
「…………あの、さっきは私も……泣いちゃってすいませんでした……」
「…………いや。もともと授業なんて受ける気はなかったからな」
俺の発言に隣で八尋が頬を膨らませたのがわかった。