第11章 親友
それから数分程会話をして、お土産を渡した。
「じゃあ俺は行くよ」
「あぁ、また帰って来いよ」
「勿論」と言って頷き、手を振ってから春樹に背を向ける。
「…貴夜!」
春樹に呼び止められ、振り返った。
「どうした?」
春樹は暫し迷って、言葉を出しかけたが口を閉ざした。
「やっぱり、何でもない」
「…そうか?」
ふに落ちない気持ちで、また背を向ける。
「またな!幸せになれよ!」
大きく手を振る春樹。
俺も笑顔で振り返した。
貴夜の背が遠ざかった頃、春樹はため息をつき空を見上げた。
「きっと…『今の彼女と出会うまで、ずっとお前が好きだった』って言ったら、あいつ困るだろうな」
自嘲的に笑い、貴夜が歩いて行った道を見つめる。
「今まで、ありがとな…」
好きだった人の姿を思い出し呟いた。
「春樹、ご飯だよ」
思わず泣きそうになるのを堪えながら、名前を呼ぶ彼女のもとへと春樹は帰って行った。