第11章 親友
春樹の家、久し振りだな。
インターホンを押し、返事を待つ。
『はい』
この声は、春樹のお母さんか。
「こんにちは、貴夜です」
『あら貴夜くん!?ちょっと待っててね!』
バタバタと慌ただしい足音が聞こえ、一瞬おさまったがまた別の足音が聞こえた。
それは玄関のドアの前で止まり、そしてゆっくりとドアが開いた。
「た、貴夜…!」
顔を覗かせたのは、紛れもない春樹で、少し感動が生まれる。
「春樹、久し振りだな、元気にしてたか?」
「あぁ!お前はどうなんだ?カナダって言う慣れない環境でもちゃんとやって行けてるか?」
母親みたいな事を言う母親に、笑みがもれた。
「大丈夫だよ」
春樹とは、高校を卒業しても時々会っていた。
大学は違ったから、会う機会は減ったけど、いつまでも親友である。
「あ、そうだ。俺、大学の頃から付き合ってた彼女、居たろ?」
「あぁ、居たな」
「来月、その子と結婚することになったんだ」
それには、凄く驚いた。
同い年で、大人しくて可愛らしい女性だ。
とてもお似合いだと思ったし、お互い愛し合っているから問題ないだろう。
高校時代に、俺と隼人が付き合い始めた事を報告した時の様に、祝福した。