第9章 本当の繋がり
会社からマンションまで会話はなく、隼人はずっと俺の後ろを歩いていた。
1ヶ月振りの我が家に、少し喜びを感じる。
俺はキャリーバックを部屋に置き、リビングへと向かった。
一方の隼人は、俺を不思議そうに見ている。
一緒にリビングに入り、俺は後ろにいる隼人に振り返った。
「隼人」
「は、はい?」
肩をビクッと震わせ、俺の次の言葉を待つ隼人。
こいつが今考えてる事が大体分かる。
大方、『別れようって言われたらどうしよう』とか思ってるんだろうな。
そう思いながら、俺は目を伏せた。
「ごめん」
「……え?」
呆けた声を出した隼人は、目を見開いて俺を見ている。
「あの時、オーストラリアに行くことちゃんと伝えられなくて、喧嘩した時も沢山酷いこと言った。あんなこと、本当は思って無いのに…。本当に、ごめん、ごめんな」
隼人ははっと我に返り、お俺の肩を掴んだ。
「お前は悪くない。俺が…もっとお前の事考えてれば」
「隼人は十分俺のこと考えてくれてる。俺はそれが、少し嬉しい」
そう言って、笑ってみせた。
隼人は泣きそうな顔をしながら俺を抱き寄せる。
「貴夜がオーストラリアに行ってから、毎日夢をみたんだ。あっちで貴夜が他の人と付き合って、俺に別れを告げる夢」
震える隼人の背中に腕を回す。
俺を抱きしめる力が少し強くなった。
「だけど、大丈夫なんだよな、もう。お前は俺から離れて行かないんだよな?」
弱々しい声が、俺の耳に届く。
俺は「うん」と呟き、同じ様に抱きしめる力を少し強くした。