第8章 大喧嘩
俺はそう叫び、自分の部屋へと向かった。
「おい待て、貴夜!」
腕を掴まれるがそれを直ぐに振り払う。
「触るな!もうお前なんか知らん!」
部屋に入りドアを閉め、鍵もかけた。
壁に背中を預け、その場にうずくまる。
「やってしまった…」
小さく呟いた声が、やけに部屋に響いた。
静けさが、後悔の念を駆り立てる。
俺はバカだ…。
あんな事言ったって、何の得にもならないじゃないか。
俺が、隼人との距離を適度に保っているのは、多分本当だと思う。
体の関係になっても、付き合っても、もう一歩踏み込ませないよう、壁を作っている。
それは自分の身を守る為でもあるし、この先お互いが傷付かない様にする為でもあるのだ。
だからあまり、「好き」とかは口に出さない。
でもそれが隼人にとって、待たされていたとは…。
隼人がどれだけ俺を想い、どんな気持ちで見ていたか、俺は知ってる。
でもそれをふみにじって来たのは紛れもなくこの俺だ。
…本当に気持ちを考えてなかったのって、俺じゃねぇか。
「──っ…」
声を押し殺し、後悔と共に涙を流した。