第6章 ありがとう
危なかった。
「俺…どうしたんだ」
あいつは特に、何か特別なことをした訳じゃない。
なのに、気持ちが高ぶって、自分を抑えられなくなりそうになる。
俺はもしかしたら、どうしようもないくらい、あいつに惚れているのかも知れない。
昔よりもっと、もっと…。
体が、何だかぞくぞくする。
何かが俺の肌を這っている様な…。
とその時、強い刺激が走った。
「ひっ!」
目を開けると、嬉しそうな表情の隼人と目が合った。
「お前、何して…!?」
「寝てたから起こしたくて」
「だからって襲うな!」
隼人の元から抜け出そうとする俺を、奴は肩を掴み阻止した。
そしてまた、元の体勢に戻す。
「……ぁ……」
まだ濡れている髪。
そして艶っぽい瞳に、自然とみいってしまう。
はっと我に返り、目を逸らす。
「貴夜?」
「な、何…」
「……いや、今、凄く可愛いかったから」
「はっ!?」
頬に手を添えられ、言葉を続けようとしても、口からは何も出なかった。
自分らしくないと分かっていても、こいつの前では自分の意思など関係無く、体が勝手にこいつを求めて行ってしまう。
こいつも同様に俺を求め、体を重ね合ったのだった。