第6章 ありがとう
唇を離すと、自分の顔が赤くなるのが分かった。
隼人はまだ眠っている様で、命拾いしたと胸を撫で下ろす。
俺、何してるんだ…。
まだ残っている隼人の唇の感触。
ダメだ、今…。
今隼人を見てしまったら、自分を抑えられなくなってしまう。
そんな気がする。
振り向きたいのを我慢しつつ、頬の火照りを感じていた。
「ん……ふぁ…。んあ、貴夜起きてたのか」
背後で、隼人が起きる気配がした。
拳を握り締め、感情を抑える。
「どうした、貴夜。具合でも悪いのか?」
髪に触れられただけで、体が少し反応した。
「な、何でもない…。風呂でも入って来いよ」
なるべく隼人を見ずに、足元にあった着替えを手渡す。
「あ、あぁ。ありがとう。じゃあ入って来る」
ベッドから抜け出した隼人が脱衣所へ入って行ったのを見計らい、俺はベッドに倒れ込んだ。