第6章 ありがとう
翌日。
廊下にて。
「貴夜」
後ろから声をかけられ振り向く。
そこには、いつもの笑顔のクラウスさんが立っていた。
「クラウスさん……おはようございます」
少し警戒しながらも、挨拶をする。
「そんな身構えなくてももう襲わないよ」
安心させる様な優しい声色でクラウスさんは言った。
「悪かったね」
そう言って、俺の頭を撫でる。
その手つきが優しくて、思わず泣きそうになった。
やっぱりクラウスさんは優しいな。
あんなことをされても尚、彼の事を信じようと思った。
きっと、悪い人じゃないから…。
「それから、野木隼人くんに飽きたらいつでも僕の所においで」
「え、あの…」
俺の手を取り、指先に口付けられる。
その時、後ろに引っ張られ倒れそうになるが、誰かに支えられる形で腕におさまった。
あ、この感触…。
後ろを振り向かなくても分かる。
「生憎、こいつが俺に飽きることはないですよ。俺が飽きさせませんから」
寧ろ離してくれないと思う。
だけどこいつの言葉が、凄く嬉しくて、堪らなかった。