第3章 社長
数日後。
「タカヤ、社長が呼んでる」
そう突然言われて、俺は重い足取りで廊下を歩いていた。
俺、何かやらかしたのかな。
心当たりが全くない…。
てか、社長ってどんな人だ、会ったこともないのに急に呼び出されて…。
社長室の前で立ち止まり、大きく深呼吸をする。
そして、ノックをした。
「どうぞ」
「し、失礼します」
ドアを開け、中に入る。
窓の外を眺めている青年。
あれ、何処かで見たことある様な…。
「三好貴夜くん、会いたかったよ」
「え?」
日本語でそう言われ、戸惑う。
青年が振り向き、ニコッと笑った。
「あ、貴方は…」
「先日はどうもありがとう。改めてお礼が言いたくてね」
そこには、街で助けたあの青年が立っていたのだ。
驚きすぎて言葉が出ない。
「ははっ、そんなに驚いた?」
楽しそうに笑った社長は俺に近付き、軽く頭を下げた。
「本当にあの時はありがとう」
「そんな!顔上げてください!」
俺の言葉に顔を上げ、またニコッと笑う。
そんな彼の後ろに、薔薇が咲いている様な気がした。
「そうだ、僕の名前、まだ言ってなかったね」
社長は俺に右手を差し出した。
「五十嵐クラウス。日本人の母とカナダの父を持つハーフさ」