第3章 社長
昼下がり。
俺は、街に買い物に出掛けていた。
「あと買うものは…特にないか」
メモに目を通し、荷物を手に持つ。
結構重いな。
そう思いながらも、街を歩いた。
「ん?」
少し先に、沢山の重そうな荷物を持った人がふらふらと歩いていた。
大丈夫かな、あの人。
心配しながら見ていると、その人が盛大に荷物をぶちまけた。
「あっ。大丈夫ですか?」
駆け寄り散らばったモノを集める。
「ありがとう、助かるよ」
結構、若い男の人の声がして、チラリとそちらを見ると、綺麗な顔立ちの青年と目が合った。
「は、はい、これで全部です」
思わず見とれてしまい、誤魔化す様に彼に落としたモノを手渡す。
「ありがとう。日本の方?」
「はい」
「やっぱり!僕日本が大好きなんだよ!」
そう、流暢な日本語で言う。
「日本語、お上手ですね」
「小さい頃は、日本で過ごしていたからね」
懐かしむ様に目を閉じた彼は、ニコッと笑った。
「本当に、助かったよ。名前だけでも教えてくれないかい?」
「三好貴夜です」
「三好……貴夜。じゃあ、僕は行くよ。気を付けて帰ってね」
「は、はい!」
そう言って、青年は人混みへと姿を消した。
「あ…」
名前聞くの、忘れてた…。