第2章 仕事場にて
唇が離されたのを見計らい、俺は隼人の胸板を押し返す。
「お前、どうしたんだよ。いつもの感じじゃない」
俺がそう言うと、隼人は力が抜けた様に、俺に倒れ込む。
「………俺が嫉妬深いって、よく知ってるよな」
「あ、あぁ」
耳元で囁いてきて、少しくすぐったい。
身を捩りながらも、隼人の話を聞く。
「だからさ、好きな奴が、今日初めて会った奴と肩組んでたりしたら、凄くモヤモヤして、不安にもなる」
肩を組む…?
あぁあの、食堂に行く時か。
まさかこいつに見られていたとは…。
隼人は俺から離れ、恥ずかしそうに頬をかいた。
俺はため息をつき、隼人を真っ直ぐ見据える。
「これからは変な誤解生まない様に言っておくけど、一度しか言わねぇからよく聞けよ」
隼人が首をかしげた。
「俺は、お前と喋ってると何故か素直になれなくなるんだ。『好き』とか言われても、嬉しい筈なのに、『俺も』って言葉がどうしても出てこなくなる」
ぎゅっと拳を握り、恥ずかしさを堪える。
「触れられた時もそうだ。お前に触れられたら、心臓が爆発しそうなくらいドキドキする。そこが、熱を持った様に熱くなる…」
俺はうつ向き、頭を隼人の胸に埋めた。
「触れられてドキドキするのも、『好き』って言われて嬉しいのも、全部隼人だけなんだよ」