第15章 愛し愛され
「でも、そんなに見えるわけじゃないから隠さなくてもいいよ」
楽しそうに笑うクラウスさん。
俺は首から手を離し、資料に視線を移した。
「それにしても、凄い量の資料ですね…」
今机に置かれている以外にもあと段ボール2つ分くらいある。
こんなの、流石にひとりじゃまとめれないよな。
「よくあることだよ。前はリサに手伝ってもらってたんだけど、彼女が係長になってからは忙しくてね」
クラウスさんは立ち上がり、ある程度まとまった資料をファイルし棚に入れていく。
なるほど、2人にはそういう繋がりがあったのか。
「係長、いい人ですよね」
「あぁ。彼女は素敵な女性だ。仕事も出来るし気配りも出来る。誰もが目標とする人物だ。頭の回転も早いからね」
よく知ってるんだな、係長のこと。
しかも、楽しそうに話す。
「係長とクラウスさんは、どのくらいのお付き合いなんですか?」
「5年くらい、かな」
クラウスさんは、昔を懐かしむ様に目を細めた。
「好き……なんですか?」
「………1ヶ月ほど前から、想い始めたんだ。彼女は何も思ってないだろうけどね」
自嘲気味に笑う彼に、何だか胸が痛くなった。
「愛し愛される関係が一番美しい。だから君たちは、本当に美しいと思うよ」