第3章 とんこつ団という名の組織
暗殺者と言われ堅い印象しかなかったが、意外とそうでもないのかもしれない。
「さて、本題だ。
……俺達がこの国の暗殺隊である事は聞いてるか?」
「はい」
僕が頷くと、レオさんはニッコリと笑った。
「なら話は早い!君をとんこつ団の一員として迎え入れたい。いいか?」
「よくないです」
「え、即答……」
クリムさんが小さく舌打ちしたのが聞こえたが怖いから振り向かない。
「あの、本当にまだ状況も理解できてないんです。いきなり、異国に来て人を殺せなんて言われても……正直困ります」
慎重に言葉を選びながら喋る。静かな部屋には僕の声が良く響き、なんだか恥ずかしくなってしまう。
「いきなり人を殺せとは言わない。常に標的がいるわけないだろう?
俺達は月に一度、城に給料を貰いに行く。その時、一緒に任務を渡される。内容は主に情報収集や国周辺の見回りだな」
両手を顔の前で組ませながら、レオさんが淡々と答えた。
……なるほど、確かに暗殺の標的が常にいるとは考えにくい。ルネさんも昼にあった時、反逆者や不法侵入者を手にかけると行っていた気がする。そんなならず者がしょっちゅういたらこの国も大変だろう。
「それでもだめですか?」
ルネさんが穏やかな声で尋ねると、僕は言葉を濁した。その情報だけでは、あっさり承諾はできない。
勿論やめられるものなら男娼なんて仕事、とっととやめてしまいたい。
でもいきなり危険な仕事に手を染めるとなると、まだ慣れた土地で慣れた(?)仕事をしていたほうがマシだ。
「……あの、そもそもなんで僕なんですか?僕より優れた人材はたくさんいるんじゃないですか?」
気まずい沈黙を紛らすためにレオさんに質問してみる。
これはずっと疑問に思っていた。なぜ攫ったのが腕利きの兵士でもなく財力のある貴族でもなく、僕なのか。
レオさんはすぐに答えてくれた。
真剣な目をして僕を見るレオさんの顔には、もう階段で盛大に転んだ男の面影はなかった。
「勿論他にも候補者はいる。
だが、君のその俊敏性と機動力を持つ者は他に中々いない。仕事で培ったコミュニケーション力は必ず重要な戦力になる」