第16章 【西谷 夕】俺が100歳になったら…
「お先に失礼します」
今日はノー残業DAY。
私はるんるん気分で家路を急いだ。
最寄駅について、ふと夕くんを思い出す。
私は烏野高校に向かった。
懐かしい坂道。
色んな想い出が駆け巡った。
「ナイスキー」
体育館からは懐かしい掛け声が聞こえた。
ボールの音、シューズが床に擦れる音、ホイッスル。
全てが私の心を奮い立たせる。
体育館の中を覗くと、男子バレー部。
私は咄嗟に夕くんを探した。
「おい、龍!負けた方がガリガリ君だかんな!」
「望むところだぜ、ノヤさん!」
声ですぐに彼の居場所が分かった。
同級生らしき子を挑発したり、同じチームの長髪の男の子に活を入れたり…。
本当騒がしいな…でも、なんか見てるこっちまで元気になる。
ピー!
ホイッスルが鳴り、ミニゲームがスタートした。
それから試合が終わるまで、私は身体が固まって動けなかった。
目付き悪いセッターの子とオレンジ頭くんのコンビとか、
レフトのパワーとか…。
でも、私が目を離せなかったのはリベロだった。
「…きっ、キレイ」
夕くんのプレイ一つ一つが美しかった。
明るくて元気がありすぎるくらいの彼からは
想像がつかないくらい、静かで美しい。
私は胸の鼓動が高まるのを感じた。
その時、夕くんに恋をしていることに気付いてしまったのだ。
「・・・ひろかさん?」
部活が終わり、こっそり帰ろうとした時、
背後から夕くんの声が聞こえた。
「やっぱり、ひろかさ・・・!!!」
夕くんの大きな声で他の人にバレる!
私はそう思って、夕くんの口を押えて、シーっ!と人差し指を立てた。
「校門で待っててください。すぐ行きます」
夕くんは小さな声で私にそう言って、体育館へ戻って行った。