第3章 【黒尾 鉄朗】不安定なトライアングル
「クロはさ…、キスしたことってある?」
彼女がこの言葉を発した数秒後。
俺は始めてのキスを経験した。
ひろかとはいわゆる幼馴染ってやつで、
研磨も合わせていつも3人でいた。
中学にあがってからは少しずつ俺と研磨とは違う事に気づいてくる。
白くて綺麗な肌。
華奢な腕、脚。
痩せているはずなのに、
どこか膨らみのある身体。
いつもいい香りがする細い髪の毛。
その変化に気づくのは俺だけじゃなかった。
「あいつ、可愛くなったよな!」
クラスの野郎どもがひろかを見て言う。
女として、あいつを見ているんだ。
何を今さら…。俺はもっと前から女としてあいつをみていた。
そんな事に気づいているか、いないのか。
いつも俺の隣にいたひろかは中学に入った途端、
教室でも女友達といるようになった。
使っているシャンプー
最近買った洋服、
テレビのアイドル
よくわからない話をしている。
それでも、登下校だけはいつも一緒だった。
中学にあがってからは一つ下の研磨はいない。
しかし、休日になると特に約束をしていなくても、俺たちは研磨の家に集合していた。
「「あっ…!」」
ある休日。
いつものように研磨の家に向かっていた。
けど、家の前まで来てハッとしてしまう。
研磨は修学旅行中だ。
全く同じことをしている奴がもう一人いた。
俺たちは顔を合わせて笑いあった。